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バンコクの夜、朗読者たち。

このにおい

真夏の新宿の夜と同じにおい

息継ぎができないくらいの湿度と、ありとあらゆる食べ物、それらのくさったにおい、人々の汗、ゴミ、その中に漂うナンプラーの香り、、
ああ、やってきた!


7年ぶりに私はカオサンの路上に立っていた。
目から鼻から口から、体中の毛穴からタイを思いっきりすいこんだ。

よし。


ここに来たらあれを食べなくちゃ。

屋台のラーメン。

すっきりして酸味のあるスープに米麺、たっぷりのパクチー、よくわからないタマネギを揚げたようなカリカリしたやつ。それにライムをじゅっとしぼっていただく。
35バーツ。
値上げしたね。。
屋台の親父がタイ語で話しかけてくる、マイペンライ(心配ないさ)と言っておく。
タイ語なんてさっぱりわからないが、タイ人に間違われるのはしょっちゅうだ。


店の前で食べていたら、いつの間にかとなりに子供が一人座っていた。
5歳とか6歳くらいだろうか
それは、きれいな服を着た女の子だった。
カオサンできれいな服を着た人などめったにいない。
白人たちだって、たいていはヒッピー風の小汚い格好をしている。
だからその子は異様だった。
高そうな花柄のワンピースに、おそろいのカチューシャ、ピンクのタイツ、エナメルの靴。

どう考えても異様だろう、、、。


私はそのときヘッドフォンからレッドツェッペリンのDazed and Confusedを聞いていた。
バンコクとツェッペリンは似合うのだ。
だから、その子が何か言ってるのに気づいたのは少し後だった。


ヘッドフォンをはずすと
その子は視線をまっすぐ前にむけたまま
「今日のお祭りにくるでしょう?」
そう言った。
「えっ?今日ってお祭りなの?」
と聞くと
「うん、そうよ。あなたを待っていたのよ。」
「・・・・・」


待っていたとはどういうことだろうか?
私はこの子に会ったこともないし、祭りなんて今初めて聞いた。

「え、わたし?」
「うん、そうよ。もうみんなあつまってるよ。早く行こう。」

はぁ、、
わけがわからなかった。
でも私はその子について行っていた。正確にはひっぱられて連れて行かれていた。
30分くらい歩いている間、もちろんその子にいろいろ質問をしてみたけど、彼女はいっさい口をきかなかった。
たったひとつ
「名前は?」という私の問いに
「フエ。」
そう答えた。


ついたのは、広場みたいなところ。
確かに、電飾がきらめき人が集まっているようだ。
でも、どこかへんだ。
もし本当にお祭りなら、バンコク中が色めき立って飾り付けられ、きらきらしているはずだった。


まったくおかしなことになった。。

しかし、これもいつものことじゃないか。いつだってこの街にくるとあらがえない力で何かに巻き込まれるのだ。
そう思って楽しむ事にした。
いろんな屋台から湯気があがっていた。揚げバナナ、パッタイ、グリーンカレー、焼き鳥、バーベキュー、、、、
今ラーメン食べたところだけど、また食べたくなる。。


私が屋台のひとつにすいこまれて行きそうになると、フエが手を引っ張って言った。

「そっちじゃない。」

不審に思いながらも、ついて行くと
さらに奥の方に、あかりが灯っているテントがあった。
どうやら私たちはそこへ向かっているらしい。
私は少し怖くなってきた。

「ねぇ、どうするの?あそこで何をするつもりなの?」
私は聞いた。
「読むのよ。」
「読む?読むって何を?」

フエは答えない。どんどんテントに向かって行ってとうとう入ってしまった。
しかたなく私もおそるおそる入ってみる。

そこには5,6人の男女が車座になって座っていた。
そして確かに何か読んでいた。
一人が声をだし、朗読する。
後の人たちがそれを聞いているようだった。

少し聞いてみて、私はハッとした。


「これ、、、私の!」


彼らが読んでいるのは、間違いなく私が書いた物語だった。。。


「どうして、、?」

フエが言った
「いつも書いたものを、声に出して読んでいるでしょう?どうしてかわからないけど、それがこのスピーカーから聞こえてくることがあるの。」

彼女が指した場所には、古ぼけた小さなスピーカーがあった。
そしてそれは私の部屋にある古いスピーカーとおんなじものだった。

「私たちはあなたのファンってこと。」
一人の女の人が言った。

「ここに集まって、君の声を聞き取っては書き写したんだ。」
年配の男性が言った。


まったく不思議な話だった。
いくら同じ種類のスピーカーだって、それがマイクとケーブルなしでそんな風につながるなんて考えられなかったし、ここにこんなにそれを聞いた人が集まっていること、そして私がここにいること、全てが不思議だった。


「生き物だって、物だって、古くなるとときどき思ってもみなかった能力が目覚めてしまうことがあるんだよ。」
中にいたおじいさんが言った。
「私はこの年になって、君の物語に出会ってよかった。そう思うよ。君の話はなんていうか、、すごくリアルで、そして本当の意味で虚構だ。」

「ありがとう。」

私は素直にそう言った。


そういうもんなんだ。
そういうふうになっていたんだ。
世界は私の力なんか、圧倒的にねじふせる。

そのとき「すとん」と納得した。

私たちは、いろんな物語を朗読し、私の新しい話もリクエストにお応えして朗読した。
みんなはすごく喜んでくれ、その夜は一晩中笑い、歌い、飲んだ。
フエは寝てしまっていた。
彼女は私の、ワニとおじいさんがパリで一緒に暮らす話が大好きだと言ってくれた。
私はお礼に、彼女にその話を本にして送る約束をした。





誰かがギターを持ち出して、ボブディランを弾いていた。
knockin` on heaven`s door
天国の扉をたたく、、、




私は眠ってしまった。






気がついたら、ホテルのベッドの上だった。
カオサンの喧噪が聞こえる。。




夢?
現実?




それはまた別の話だ。








※このお話は私の完全な虚構、妄想でできており、現実から一歩入り込んだ空想の世界になります。楽しんでいただけたら幸いです。

写真をのせようと思ったのに、スキャナーがうまく動かなくて断念、、、後ほどまたアップしますー(できれば、、)
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by galwaygirl | 2010-06-23 00:21 | 妄想旅日記
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