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カテゴリ:妄想旅日記( 6 )

火の島、氷の島 2


Sigur Rós -untitled






おばあさんの家は小さな、古い
この島特有の家だった。
小さな窓、小さなドア
木のイスが庭にぽつんとおいてあった。

私はキッチンのとなりの暖炉のある部屋に通され
そこに座るよううながされた。
おばあさんはとくに何もしゃべらなかった。
ただ食事のしたくをするために、キッチンにむかった。


その部屋にはたくさんたくさん古いものがあって、とてもごちゃごちゃしていた。
古い掛け時計がいくつも壁にかかっていたが、どれひとつとして正しい時刻を刻んでいるものはなかったし、それらが次々に違う時間を告げるから、かちかちかち、ぼーんぼーん、、、ちっちっちっち、、、、と、常にさわがしい音であふれていてまるで洪水のようだった。
それでも不思議なことに、そこはとても静かだった。
それはぱちぱちとはぜる暖炉の火のせいだったのかもしれないし、外がとても寒くて私はとてもおなかがすいていて、やっとありつけるかもしれないごちそうのことを考えていたからかもしれない。
ともかく、私はその部屋を見ておばあさんのことをとても信頼できる人だと感じた。
それだけではなく、とても素敵な人だということも。
なぜならごちゃごちゃしているように見えても、すべてのものがとても大切に扱われ、何がどこにあるのかきちんと記憶されているように見えたから。



私のおなかがからっぽになって、ぐうぐうなりだしたころ
おばあさんが湯気のたったボウルをトレイにのせて、はいってきた。
ボウルの中には赤くとろっとしたスープが入っていた。
私はありがとうもいただきますも言うのを忘れ、食べはじめた。
それは目の覚めるようなおいしさだった。
というか私は夢中で食べたので正直味など覚えていないのだが、そのときは世の中にこんなにおいしいものがあるなんて!!という感動でいっぱいだったのを覚えている。
あっというまに空になり、おばあさんはおかわりをもってきてくれた。
私は3杯ぺろっとたいらげた。

私が食べ終わるのをおばあさんは満足げに見届け
たばこに火をつけ言った。
「あんたどこからきたんだい?」
私が答えると
「ずいぶん遠いところから来たね、ここは寒いだろう。」
たっぷりとしたひげをなでながら、たばこを吸うおばあさんを見て
もう男も女も超越した人なんだなと思った。
ひとりでここに住んでいるのかと聞くと彼女はゆっくり言った。
「じいさんに7年前死なれてね。それからひとりだよ。子供はみんなレイキャビクに住んでるんだ。ここには何もないからね。不思議なことに、じいさんが死んでから私のあごにこのひげがはえてきたのさ。いくらそってもはえてくるんでね、きっとじいさんが私の中で生きてるんだと思って、それでこんなふうにのばしているってわけさ。おかげでまわりからは変人扱いだけどね。」
そう言ってはっはっはと笑った。


私たちは時間も忘れ、とても楽しいひとときをすごした。
私はスープの作り方をおばあさんに教わった。それはとてもシンプルでどこにでもあるような作り方だった。
「野菜がうまいんだよ。あたしが作ってるんだからね。」
そう言っておばあさんは庭を指差した。そこには小さな畑があって、じゃがいもやらにんじんやらが少しずつ植わっていた。

帰るとき、おばあさんは少しさびしそうに
「おなかがすいたらまたおいで。」
と言うので、私は何度もありがとうと言ってそこを後にした。

外はあいかわらずとても寒かったけど
私はすっかり暖まって、
なんだかとてもかけだしたい気分だった


神様がいたらありがとうとさけびたい!!!はずかしいけど!



外は少し雨がふったらしく、しっとりとぬれていた。
道路のむこうに、うっすらと虹がでていた。
私が虹がでてる!と叫んだら、むこうからきたおじさんがへんな顔してこちらを見た。

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by galwaygirl | 2010-11-22 17:11 | 妄想旅日記

火の島、氷の島 1


Benni Hemm Hemm - Retaliate





「いけない、、、鍵。」
泊まっていたホステルの小さな部屋から出ようとして、部屋の鍵をもらっていなかったことに気がついた。昨日の夜遅く着いたので、ばたばたと部屋に通されそのまますぐに寝てしまったのだ。
フロントでサンドウィッチをほおばりながら、新聞を読み、時たまテレビをちらちら見たりしているお兄さんに声をかけた。
「あの、鍵をもらっていなかったのですが、、。」
お兄さんは一瞬全ての手をとめ、ぽかんとこちらを見た。それからあははと笑いだした。
今度はこちらがぽかんとすると、彼は急にまじめな顔になり
「何のために鍵が必要なの?」
はっきりとそう言った。
こまった。宿に泊まれば鍵はかけるもんだと思っていた。
だって、、、、、、
そう、あぶないから。いろいろ大事なものもあるしね。

そう言うと、お兄さんはにっこり笑って
「それなら大丈夫。ここでは誰も人のものを盗ったりなんかしないよ。」
そう言ってまたサンドウィッチと新聞とテレビの世界へ帰っていった。

そうか、そういうものなのか。
私は一人納得して、ホステルを出た。





その島は世界地図のはじっこ、世界の果ての果てのほうにぽつんと存在していた。
人々からは氷の島と呼ばれていた。
そして同時に火の島とも。
なぜなら火山でできた島だからだ。

私はそんな島がどんな風に存在しているのかを、ただ見てみたくなったのだった。
旅に出る理由なんてそんなもんだった。


昨日レイキャビクを後にして、ダルヴィークという小さな小さな街に来ていた。
見るものはとくにない。
でもその街は、今まで行ったどの街とも違った雰囲気を持っていた。
それは、、なんというか、、、、「果て」なのだ。いったい何の「果て」なのかはわからない。
だけどそこは確かに何かの「果て」だった。


朝食を取るため、1件のカフェに入ろうとドアに手をかけたそのとき、突然ドアが開いて中からおばあさんが出てきた。
いや、、、おじいさんか、、、?
すごく長いひげをはやしていた。でもよく見るとそのひげの先が結ばれていて小さなリボンがついている。そして、とても長いスカートをはいていた。
だから一瞬おばあさんかと、、、。
「あんた朝ごはんを食べにきたのかい?」
私は突然声をかけられたことよりも、その人の声にびっくりしてしまい返事ができなかった。なぜならその声は完全に女性のものだったからだ。
彼女(彼?)が私の顔をのぞきこんだので、私はやっとはいと言った。
「残念だね。今日はいい卵が入らなかったから朝食は休みだってよ。」
私はとてもがっかりした。昨日夕飯をたべそこねていておなかがぺこぺこだった。
私の落胆した顔を見ておばあさんは
「あんたかわいそうだね。うちに来なさい、何か作ってやるよ。」
そう言ってとっとっと歩き出した。
私はあわてて後についた。

おばあさんはとても早足だった。




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                                 2へつづく
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by galwaygirl | 2010-11-20 21:12 | 妄想旅日記

アソーレス諸島の夜ー紫の空

空が紫色をしている。

時々ストロボを焚いたような光が
ぴかり ぴかりと走りぬけた。


音はまだ聞こえない。


静かな空と海に閃光だけがスピードを持っていた。




私は1件のバーに入った。
とても静かで、がらんとしたバーだった。

そこでビールを飲みながら、死というものについて考えていた。
この島に入ってからそれは、なんだかいつも私のとなりにたゆたっているようだった。

そしてそれは、私の中のひとつの信念 ー私は若く健康でいつまでも生きられるというー をゆらがせうすめていくような感覚だった。



漁師と思われるおじいさんが入ってきて、私のとなりにすわった。
ウィスキーを一杯注文し、どこから来たのかと聞く。
私が答えると、ふーんと特に興味もなさそうにあいづちをうち、自分はスペインから来たと言った。
「今日は海が荒れるから、仕事は休みだ。
嵐が来るよ。」
そう言って、私にもウィスキーをたのんでくれた。

それから、おじいさんはとつとつと語りだした。
まるで、ひとりごとのように。
私など存在しないかのように、ただとつとつと。

「7年前までおれはいつも親父と一緒に漁にでていた。
親父はおれの師匠でもあったし、仲間でもあった。
でも、7年前のこんな嵐の日
大波にさらわれて、親父は一瞬で目の前から消えた。
大嵐だったんだ。
どうすることもできなかったさ。飛び込んで助けるなんてできると思うか?
動くこともできないくらい、荒れていたんだ。
おれはしばらく、何が起きたのかわからなかった。
考えてみてくれ、今までずっと一緒に暮らしてきた人間が一瞬で消えるということがどういうことなのか・・・。

いくら考えてもわからなかったよ。
親父はいったいどこに行ったのか。

わかったことはただ一つ
人生っていうのはそういうもんだってことだ。
おれがいくら頭使って考えて、わからないと泣いてわめいたって関係ない。
ただ、人生ってのはそういうもんだったんだ。」



外ではあいかわらず稲妻が光っていた。
いつもそこにあるのに、忘れたようなふりをしている存在を照らすように。

少しだまってお酒を飲んでから、
おじいさんはまた言った。


「死は、突然だろうが少しずつだろうが圧倒的な力でやってくる。
それもおれたちが考えているよりも、ずっと早く。
ずっと、ずっと早く。

おれはそれがわかったんだよ。

だからって何ができる?
何もできやしないよ。
ただ毎日を生きるだけだ。ある日やってくるまではね。」



私はウィスキーを飲み干して、席を立った。

「おじいさん、私はそれでも嵐の日に海に出ていくよ。
今、すごく聴きたい音楽があるんだ。」


そう言って、私はヘッドフォンを耳につけた。
それは、この稲妻が光り始めたときから頭の中でなっていた音楽だった。



今日の音楽

マーキュリーレヴは雷とよく合うと思いませんか。。
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by galwaygirl | 2010-10-04 19:45 | 妄想旅日記

探しもの、なくしもの、見つけるもの。

その日
私のうちの電話がリンとなった。
久しぶりに、私は家に電話というものがあったことを思い出した。


ーはい。
あなたの財布がみつかりました。
は?
こちらロンドン警察のものですが、、、。確か、2月にスリにあわれて届けを出されていましたよね。。
あぁ、、、。見つかったんですか。
えぇ、まぁもちろん現金はありませんでしたが、クレジットカードやIDのたぐいは全部そのまま入っていますよ。ラッキーでしたね。
それで、どうすれば、、、
基本的には取りにきていただくようになるんですが、、。
でも私 今、非常に遠い場所にいまして、イギリスに行く予定はないんです。
そうでしたか、、。もちろんお送りする事もできますが、その場合運送会社をご自分で手配していただくことになります。届け出を出されたノッティングヒル署でお預かりしていますので、そちらまで取りに来るようにしていただくということですね、、。
つまりは警察は何もしてくれないということですね。。
、、、、、、、、、、、、、、、、
、、、、しかし、こうやって連絡しているだけでも大変な作業なんですよ!いったい一日何件のスリやひったくりが発生するとおもってるんですか。だいたいスリにあうってことはそちらの不注意もあるでしょう、、、。
わかりました。すみませんが、それ破棄していただけますか。
え、、必要ないんですか?
ええ、クレジットは全て再発行していますし、IDももうヨーロッパにはいないので必要ありません。
そうですか、わかりました。
ありがとう。


それきり、そのことは忘れていた。
私は私の日常が忙しく、旅のことやイギリスのこと、果ては自分があったスリのことなんて思い出すひまはぜんぜんなかった。



ある日
また一本の電話がなった。


ーはい。
あなたのお財布を拾いました。
は、、??
昨日、ロンドン市街を歩いていて拾ったんです。現金ははいっていませんでしたが、連絡先が見つかったのでお電話しました。あ、現金は私がとったわけじゃありませんからね。すでになかったんです。スリにでもあわれましたか、、。
あのう、、人違いじゃないでしょうか?確かに私は2月にスリにあいましたが、その財布はもう見つかっていて警察の方に処分してもらったはずなんです。
え、、。そうなんですか。、、、、、、おかしいですね。じゃあなんでこの電話番号はあなたにつながるんでしょうか。お名前は・・・さんじゃないですか?
、、、、、、確かに、、、そうですが。。
お財布は、茶色い革の二つ折りのものです。mのマークが型押しで入っています。
、、、、、、、。
ちがいますか。
いや、、私のものらしいですね。失礼ですが、どちらで拾われたんでしょうか?
地下鉄ウォータールー駅の入り口付近です。
、、、、、、、。



ウォータールー。。。




ぼんやり、記憶がよみがえった。
そういえば、旅の途中私はその駅で一人の女に出会っていた。
地下鉄に乗ろうと思ったら、お金をチャージしたカードがなかった。(私はよく物をなくすのだ。)
チッと思い、あたりを探していたときだった。
ーさがしものはもうでてこないよ。
その女は長い髪の毛で顔をかくしてはいたが、10代にも60代にも見える不思議な顔立ちをしていた。そして冬だというのにボロボロのワンピースにショールをまいただけの軽装だった。
ワンピースはぼろぼろできったなかったが、あきらかに良いもので、どこかの高級ブランドのものと思われた。
確実にその女がすったのだと思った。
ー返してください。
むりよ
どうして、今とったんでしょ?返してくれなきゃ警察を呼ぶから。
返ってきたときには、もうそれは同じものじゃない。
どういうこと?
わかるでしょう。変わらないものなんてないの。手を離れたその瞬間からもうそれはあなたの知ってるものじゃない。なくしたものがでてきたとき、なんだかもう愛着がわかなくなっていたりしない?もちろんでてきた時はうれしいのよ。探していたんだから。でもなんていうか、それはもう前の輝きを失ってしまっている。ちがうかしら?
、、、、、、。

女はふっと笑って、Bye,と言った。
そのままどこかに消えてった。



結局私のカードはでてこなかった。
私はまたお金を払い、切符を買って地下鉄に乗ったのだった。


そんなことを思い出して、私は確かめてみたくなった。
そのウォータールーで見つかったという財布は本当に私のものなのか。
そしてそれはどんな風に変わってしまっているのか。。
ただ確かめたてみたくなったのだ。
電話をくれた人はリーさんというロンドンに住む中国人だった。名前と電話番号をメモしてその電話を切った。


そんなことでまたロンドンに向かうことになった。
今度は何もなくさないように、万全の体制で行こうと思っている。
だけど、なくすときには何をやったってなくすんだと思うけど、、、。

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今日の音楽
Arctic Monkeys/ Dangerous Animals
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by galwaygirl | 2010-08-24 18:39 | 妄想旅日記

バンコクの夜、朗読者たち。

このにおい

真夏の新宿の夜と同じにおい

息継ぎができないくらいの湿度と、ありとあらゆる食べ物、それらのくさったにおい、人々の汗、ゴミ、その中に漂うナンプラーの香り、、
ああ、やってきた!


7年ぶりに私はカオサンの路上に立っていた。
目から鼻から口から、体中の毛穴からタイを思いっきりすいこんだ。

よし。


ここに来たらあれを食べなくちゃ。

屋台のラーメン。

すっきりして酸味のあるスープに米麺、たっぷりのパクチー、よくわからないタマネギを揚げたようなカリカリしたやつ。それにライムをじゅっとしぼっていただく。
35バーツ。
値上げしたね。。
屋台の親父がタイ語で話しかけてくる、マイペンライ(心配ないさ)と言っておく。
タイ語なんてさっぱりわからないが、タイ人に間違われるのはしょっちゅうだ。


店の前で食べていたら、いつの間にかとなりに子供が一人座っていた。
5歳とか6歳くらいだろうか
それは、きれいな服を着た女の子だった。
カオサンできれいな服を着た人などめったにいない。
白人たちだって、たいていはヒッピー風の小汚い格好をしている。
だからその子は異様だった。
高そうな花柄のワンピースに、おそろいのカチューシャ、ピンクのタイツ、エナメルの靴。

どう考えても異様だろう、、、。


私はそのときヘッドフォンからレッドツェッペリンのDazed and Confusedを聞いていた。
バンコクとツェッペリンは似合うのだ。
だから、その子が何か言ってるのに気づいたのは少し後だった。


ヘッドフォンをはずすと
その子は視線をまっすぐ前にむけたまま
「今日のお祭りにくるでしょう?」
そう言った。
「えっ?今日ってお祭りなの?」
と聞くと
「うん、そうよ。あなたを待っていたのよ。」
「・・・・・」


待っていたとはどういうことだろうか?
私はこの子に会ったこともないし、祭りなんて今初めて聞いた。

「え、わたし?」
「うん、そうよ。もうみんなあつまってるよ。早く行こう。」

はぁ、、
わけがわからなかった。
でも私はその子について行っていた。正確にはひっぱられて連れて行かれていた。
30分くらい歩いている間、もちろんその子にいろいろ質問をしてみたけど、彼女はいっさい口をきかなかった。
たったひとつ
「名前は?」という私の問いに
「フエ。」
そう答えた。


ついたのは、広場みたいなところ。
確かに、電飾がきらめき人が集まっているようだ。
でも、どこかへんだ。
もし本当にお祭りなら、バンコク中が色めき立って飾り付けられ、きらきらしているはずだった。


まったくおかしなことになった。。

しかし、これもいつものことじゃないか。いつだってこの街にくるとあらがえない力で何かに巻き込まれるのだ。
そう思って楽しむ事にした。
いろんな屋台から湯気があがっていた。揚げバナナ、パッタイ、グリーンカレー、焼き鳥、バーベキュー、、、、
今ラーメン食べたところだけど、また食べたくなる。。


私が屋台のひとつにすいこまれて行きそうになると、フエが手を引っ張って言った。

「そっちじゃない。」

不審に思いながらも、ついて行くと
さらに奥の方に、あかりが灯っているテントがあった。
どうやら私たちはそこへ向かっているらしい。
私は少し怖くなってきた。

「ねぇ、どうするの?あそこで何をするつもりなの?」
私は聞いた。
「読むのよ。」
「読む?読むって何を?」

フエは答えない。どんどんテントに向かって行ってとうとう入ってしまった。
しかたなく私もおそるおそる入ってみる。

そこには5,6人の男女が車座になって座っていた。
そして確かに何か読んでいた。
一人が声をだし、朗読する。
後の人たちがそれを聞いているようだった。

少し聞いてみて、私はハッとした。


「これ、、、私の!」


彼らが読んでいるのは、間違いなく私が書いた物語だった。。。


「どうして、、?」

フエが言った
「いつも書いたものを、声に出して読んでいるでしょう?どうしてかわからないけど、それがこのスピーカーから聞こえてくることがあるの。」

彼女が指した場所には、古ぼけた小さなスピーカーがあった。
そしてそれは私の部屋にある古いスピーカーとおんなじものだった。

「私たちはあなたのファンってこと。」
一人の女の人が言った。

「ここに集まって、君の声を聞き取っては書き写したんだ。」
年配の男性が言った。


まったく不思議な話だった。
いくら同じ種類のスピーカーだって、それがマイクとケーブルなしでそんな風につながるなんて考えられなかったし、ここにこんなにそれを聞いた人が集まっていること、そして私がここにいること、全てが不思議だった。


「生き物だって、物だって、古くなるとときどき思ってもみなかった能力が目覚めてしまうことがあるんだよ。」
中にいたおじいさんが言った。
「私はこの年になって、君の物語に出会ってよかった。そう思うよ。君の話はなんていうか、、すごくリアルで、そして本当の意味で虚構だ。」

「ありがとう。」

私は素直にそう言った。


そういうもんなんだ。
そういうふうになっていたんだ。
世界は私の力なんか、圧倒的にねじふせる。

そのとき「すとん」と納得した。

私たちは、いろんな物語を朗読し、私の新しい話もリクエストにお応えして朗読した。
みんなはすごく喜んでくれ、その夜は一晩中笑い、歌い、飲んだ。
フエは寝てしまっていた。
彼女は私の、ワニとおじいさんがパリで一緒に暮らす話が大好きだと言ってくれた。
私はお礼に、彼女にその話を本にして送る約束をした。





誰かがギターを持ち出して、ボブディランを弾いていた。
knockin` on heaven`s door
天国の扉をたたく、、、




私は眠ってしまった。






気がついたら、ホテルのベッドの上だった。
カオサンの喧噪が聞こえる。。




夢?
現実?




それはまた別の話だ。








※このお話は私の完全な虚構、妄想でできており、現実から一歩入り込んだ空想の世界になります。楽しんでいただけたら幸いです。

写真をのせようと思ったのに、スキャナーがうまく動かなくて断念、、、後ほどまたアップしますー(できれば、、)
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by galwaygirl | 2010-06-23 00:21 | 妄想旅日記

旅のはじまり。

人生のとある一時期、私はよく用事もないのに成田空港へ行った。


そこはちょっと身分を証明するものさえあれば
誰でも簡単に
少しだけ、非日常が味わえた。



スーツケースを持ったたくさんの人。

たくさんの外国人。

英語や中国語、はたまた聞いた事もないような言葉が飛び交い
わくわくした。


チェックインカウンターをひとつひとつ丁寧にのぞいて、
どこ行きの便なのか確認した。

北京、ニューヨーク、シドニー、ロンドン、バンコク、、、、


ひとつずつ確認しては、そこがどんな場所なのか想像するのが好きだった。



それから、飛行機の離着陸が見えるデッキまでのぼって、飛び立ったりおりてきたり、また飛び立ったりする飛行機をあきるまで眺めた。


ある日、いつものように
ベンチに座って飛行機を眺めていたら、いつのまにかとなりに人が座っていることに気づいた。
ちらっと見ると、ピンク色のスーツを着た見知らぬおばあさんだった。




「あんたはどこにいるんだい?」




彼女ははっきりとそう私に聞いた。





「バンコクです。」

私は言った。





「そうだね。あそこはいつだって始まりの場所だ。」




それを聞いて、なにかのピントが合ったような感じがした。





「はい、全てはこれから始まるんです。」


私は笑顔でおばあさんに言った。

おばあさんも笑って、「本が好きか?」
と聞いた。



「大好きです。」



「本はいつだってあんたの味方をしてくれるよ。ボン・ボヤージュ!」




そう言ってどこかへ去って行った。



私はすぐに家に帰り、そのまま飛行機のチケットを取った。
身の回りのことをいろいろ整理して、スーツケースを買い、帽子を買い、パスポートも準備した。
本屋に行き、10冊の本を選び詰め込んだ。
当時はipodもなかったから、MDウォークマンと大量のMDも詰めた。
スーツケースはパンパンにふくれあがった。。


でも私は本当にわくわくしていた。
あの空港で得られるわくわくなんて比べ物にならないくらい!
私は本当に好きなものを全部スーツケースに詰め込んで、旅立った。

始まりの街バンコクへ!!
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※この話は全てただの私の妄想であって、現実ではありません。。すみません。一応現実と妄想の区別はついています。・・・その・・・つもりです。。。
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by galwaygirl | 2010-05-24 00:34 | 妄想旅日記