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神田神保町古書店主の深淵

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重たい扉をあけると、空気の密度が変わった。
もう何百年もそこにあるような膨大な古い書物が放つ紙やインクのにおいがただよって、私を圧倒する。
本の背表紙たちも全てが同じ時を過ごしてきたように同じ色に変わってしまって、全体が茶色の本棚。
店中が茶一色に見えた。

奥のほうから、眼鏡をかけたおじいさんがこちらをじろりと見る。
本当に一瞬で店主はこの人だとわかるような、存在感。
まるで映画を見ているような、このシーンに私はドキドキしてしまった。


神田 神保町のとある本屋さんの話。
ちなみに写真の矢口書店さんの話ではありません。
絵になるから撮ったまでです。(そういう人たくさんいるでしょうね。。)


話はさかのぼって、あの大地震があった日。
イギリスの友人から一通のメールが届いた。
地震がおこる数時間前に届いていて、私は気付かなかったのだけど
それから数時間後に、また同じ人からあせったようにメールが届いていた。「今、日本でたいへんな地震が起こったってニュースで聞いてびっくりしている。朝まったく関係のないメールを送ってしまってごめん。気にしないで、あなたの身の安全を心配している。」というような内容のメールだった。

その一通目のメールには、彼からの頼み事が書いてあった。
彼の友人が一枚の浮世絵を持っているのだが、そこに書いてある言葉の意味を翻訳してほしいということだった。
私は、浮世絵に対する知識などまったくもっておらず、ネットで調べてやっとそれが歌麿のものであるらしいということがわかっただけであった。

さて、こまった。。
ということで、書に詳しい私の伯母に聴いてみた。
伯母も歌麿のものであることと、衝立の晩鐘というサブタイトルのような言葉はわかったものの、
タイトルである風流〜八景の、真ん中の部分がよくわからないという。
伯母もわからないとなると、これはもう専門家に聞くしかないなと思い、
考えた末に神保町に足をはこんだのである。


そこで、冒頭の書店のシーンにもどるのだ。
買いもしないのに、聞くだけなんておこられるんじゃなかろうか、、、とか
質問があんぽんたんでおこられるんじゃなかろうか、、、とか
とにかく私のようなものは入っていっただけでおこられるんじゃなかろうか、、、、とか、、


かなり、びくびくしていたのである。。


ところが、
「あのう、、、こちらで伺ってもいいものかわからないのですが、、、」
とかなり低姿勢で持って行った版画をプリントアウトしたものを渡すと、
店主は眼鏡をずりっとあげて、それをしげしげと眺め
全てを簡単に教えてくれたのである。

あっさり、、
これは風流座敷八景だ。と。

さすがです。。
「有名なものなんですか?」
と聞くと、「うーん、、これは2代目歌麿のものだね。こんな屋号も見たことないし、虎の六月っていう判もめずらしい。しかし、これは状態が悪いようだ。」
と、ものの2、3分で全ての答えを教えてくれたのだった。

「それ以上のことはわからないね。」
と言って、また仕事に戻っていったので(何をしているのかは、さっぱりわからなかったが、、)
私は何度もお礼を言って、店を後にしたのだった。


しかし、2代目のものとは、、、
ぱっと見てわかるんですね〜。
私にはさっぱり。
今回、何か神保町という延々と続くような深さの穴蔵の深淵をちらりと見ることができた気がして、おそろしいやらうれしいやら、、
愛想こそなかったものの、店主さんは実際かなり親切にいろいろ教えてくれて
勇気をだして聞いてみてよかったと思ったのだ。

それにとにかく、おこられなくてよかった、、。
とほっとしたのであった。


その浮世絵は2代目のものであるし、状態が悪いとのことで特に価値のあるものではなさそうだったのだけど、帰ってからさっそく友達にメールしてなんとか訳して教えることができたのだった。(私の訳もあやしいのだけど、、)
もう、彼はすっかりこのことなど忘れているかもしれないし、他の人に頼んでしまっていたかもしれないが、私は自分で調べることができてよかったと思った。
なかなか楽しい作業だったし、浮世絵をもっと見てみたいなと思うようになった。





素敵な出会いはそこらじゅうにあるもんだ。




今日の音楽
Bjork / Triumph of a heart

このプロモ大好き。めずらしく低予算ぽいけど、、。
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by galwaygirl | 2011-04-06 01:08 | 日常の旅日記
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